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アメリカにLyrical Lemonade帝国を築く、若き野心家 Cole Bennett

 

Written by: 和田哲郎 (FNMNL)

 

音楽の情報を、特にヒップホップのようにリリースのスピード感が速いジャンルのものは、SNSなどで音楽メディアのSNSアカウントなどをフォローしておいた方が重要な作品などを見逃さずに済むだろう。

 

ではこの記事を読んでいる方はどんなアカウントをフォローしているだろうか、老舗のXXLだろうか、ヒップホップだけではなくアメリカのポップカルチャーの情報を余すことなく追うComplex、もしくはファッションフリークの皆様はHYPEBEASTなどが代表的なアカウントだろう。もちろんHIPHOP DNAのアカウントもチェックしておくべきだが、今日紹介したいのはあるブログだ。

 

ブログという響きがもはや懐かしくなる人もいるかもしれないが、Lyrical Lemonadeというこのブログは今のUSのヒップホップシーンにおいてブログ以上の存在感を誇っているのだ。

 

このブログは現在22歳のCole Bennettによって彼が高校生の時から運営されている。Cole Bennettはシカゴの中心地から100km弱のところにあるプラノという土地で育ち、Lyrical Lemonadeも最初はシカゴのアーティストをフォローするための内容をポストしていた。

 

Lyrical Lemonadeはその後シカゴのアーティストだけでなく、積極的にサウスフロリダなどの若手のアーティストをピックアップしていったが、それだけではここまでLyrical Lemonadeが注目されることはなかったはずだ。楽曲だけの情報なら先述したようなビッグメディアも存在するし、ヒップホップ大国のアメリカではブログも無数に存在するのだ。

 

BennettとLyrical Lemonadeがここまで成功した理由はなんだろうか。彼はライヴの撮影から始めたカメラのスキルを持って、自身がピックアップしたアーティストたちのミュージックビデオの撮影をスタートさせる。そのアーティストたちはSki Mask The Slump God、Famous Dex、Lil Pump、Smokepurpp、Yung Pinch、Lil Xan、Lil Skies、Juice WRLDなど、いわゆるSoundCloudラップ以降の錚々たるアーティストが揃っている。

 

彼のミュージックビデオの特徴は、なんといってもアニメーションなどを中心としたカラフルなエフェクトの使い方だ。デポール大学在学時に観たという故Mac Millerの”Welcome To America”のビデオに影響を受けたという、実写の中にアニメーションエフェクトが挿入されるスタイルは、若いアーティストたちの瑞々しいエネルギーを伝えるのに効果的な方法だったのだろう。Famous Dexの”Hit Em Wit It”のビデオをきっかけに注目を集めたBennettは、若手のアーティストたちの撮影を積極的にスタートさせる。その理由について彼はすでに人気のあるアーティストのビデオを撮影する場合は、自身でディレクションができずに、ビデオがいつリリースされるかもわからないからと述べている。

 

しかしこれが功を奏した形になったのだろうか、Benettの撮影したアーティストのビデオは続々とヒットになり、BenettはSoundCloudラップの影の立役者として存在感が強くなっていった。

 

そしてここでBenettはさらなる策に打って出る。彼は自身が撮影したアーティストが出演するイベントを地元シカゴで定期的に行ってきたが、今年はそのスケールを一気に拡大し夏フェス『The Summer Smash』として開催したのだ。出演したのはJoey Bada$$にはじまり、Trippie ReddやSki Mask The Slump God、Famous Dex、Lil SkiesなどまさにLyrical Lemonadeを代表するアーティストたち、他にも地元シカゴのVic MensaやMick Jenkinsなどが出演し開催された。このフェスはシカゴのイベント会社SPKRBXと一緒に開かれたが、同社の代表はフェスの成功について「Lyrical Lemonadeがブランドとして確立している」ことを理由にあげている。実際にLyrical Lemonadeは自身でもマーチャンダイズを販売しているが、それらは即ソールドアウトになっており、それはLyrical Lemonadeのブランド性をファンが支持している証だろう。

 

Lyrical Lemonadeという名前は広がったが、Benettが果たしてブログだけを運営していたらここまで幅広く知られる存在になっただろうか。もちろん答えはノーだろう。もちろんブログも重要なメディアだが、そこでアーティストの情報を伝えるだけではなく、自身が良いと思った若手アーティストのビデオを撮り、そのアーティストたちを招きイベントを開催するというBenettだけが出来るシーンの1プレイヤーとしての動きがあったからこそ、ここまでの成功を確立したのだ。つまり彼はキュレーターでありつつも同時にミュージックビデオやフェスなどのコンテンツメーカーという立場を作ったことで、彼だけのある種のコミュニティーを作り上げたのだ。

 

しかも彼はインディペンデントであることにこだわりをみせている。実際多くのメジャーレーベルがLyrical Lemonadeのレーベルを作らないかとオファーをしているようだが、Benettは自分自身の信念に従うことをチョイスしている。Benettにとって自身の好きなアーティストをピックアップするのが一番の関心事であり、メジャーレーベルの傘下に入ることでその動きに制限がかかると彼は考えているようだ。

 

ではBenettの次なる動きは一体どのようなものだろうか。まず彼は来年Lyrical Lemonadeという本当のドリンクを発売する予定だ。

 

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spring 2019 😢🍋😢

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こんなジョークのようなプランだけではなく、もちろん来年もフェスは開催する予定であるという。また彼はミュージックビデオも引き続き自身で監督を行っていきつつも個人的にはドキュメンタリーやショートフィルムの撮影に意欲をみせている。

 

今年はJuice WRLDなどのビデオを手がけたCole BenettとLyrical Lemonade、来年はこの一大プラットフォームからどのようなアーティストがシーンに飛び出していくのだろうか。その動きはチェックしておいた方がいいだろう。

 

https://lyricallemonade.com

 

 

https://www.instagram.com/lyricalemonade/

 

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