ヒップホップの歴史の中でも、最もインパクトのあるグループの一つとして世界中に名を轟かせたWu-Tang Clan(ウータン・クラン)。今でも大きな影響力を持つ彼らであるが、ウータンを象徴する金色のロゴも非常に印象的であり、ロゴだけを知っているという人もいるだろう。そんな「W」のデザインを作ったウータンのメンバー、Mathematics(マスマティクス)がHipHop-N-Moreのインタビューに答えた。
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元々は中学校の頃からグラフィティアーティストとして活動していたMathematicsは、ある日、ウータンのメンバーであるRZAに声をかけられ、グループのステッカーの制作を頼まれた。これがきっかけとなり、ウータンのロゴを制作することにもなったMathematicsであるが、彼はその経緯について以下のように語っている。
RZAがTommy Boyに所属していた頃に、彼に頼まれてウータンのステッカーを制作したんだ。その頃、彼はPrince Rakeemという名義で活動していた。元はウータンという文字の下に剣があるデザインだった。デザインのアプローチを見ることができれば、あのWのロゴのバリエーションの一つとも言えるね。ロゴを制作したとき、マジで一晩で書いたんだ。「明日必要なんだ。プロジェクトのプレスが明日なんだ。」と言われて、俺は「マジかよ、やってみるよ」みたいな感じだった。
あのアイコニックなロゴは、実は一晩で制作したものだったと明かしたMathematics。彼は以下のように続けている。
「しかも当時、俺は大工仕事をしていて、帰宅したばっかりだった。クイーンズのサウスサイド・ジャマイカを任されていたんだ。そのまま俺はフィリーのブラントを巻いて吸って、床に座りながらオールドイングリッシュを飲んでた。ただそれだけだよ。そんな感じでウータンのロゴが生まれたんだ。」
それから次の日も仕事があったMathematicsは時間がないため「俺は気に入ってるよ。カッコいいと思う。気に入ってくれたらいいけど」という旨をRZAに伝えたようだ。限られた時間の中で作業に取り掛かり、伝説のロゴとも言えるデザインを生んだMathematicsであるが、「ウータンのロゴがここまでアイコニックになると感じていましたか?」と質問された彼は「それはわからなかった」と答えている。
俺のブラザーたちが持っているものが何か特別だったってことは知ってた。Method Man、Ghostface Killah、GZA、Raekwon、ブラザーたちは全員ドープだ。だけど今みたいになるということは俺には見えてなかった。予想できてたと言うと嘘になる。ただRZAは「いや俺は知ってたよ。全部見えていたからね。」と言うだろうね。彼を疑ったことは一度もないし、彼の言ったことはすべて達成され、実を結んだ。ただ個人的に言うと、俺自身は見えてなかった。ここまでビッグなことになるとは思ってなかったよ。