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近日公開のプレイリスト・ムービー『WAVES/ウェイブス』監督インタビュー。物語を彩るカニエ・ウェスト、フランク・オーシャン、タイラー・ザ・クリエイターなどについて語る。

 

※2020 年 4 月 10 日(金)より公開を予定しておりました 『WAVES/ウェイブス』は、新型コロナウイルスの影響で公開が延期となりました。

 

(原文)

4月10日より全国で公開予定の映画『WAVES/ウェイブス』。こちらの作品は日本でも既に公開中の話題の映画「ミッドサマー」などで知られる制作会社A24の最新作として注目されている。トロント国際映画祭で、『パラサイト 半地下の家族』『ジョジョ・ラビット』など、アカデミー賞を争う注目作が上映される中、同映画祭始まって以来の最長のスタンディングオベーションを浴びた作品となった。

 

この「WAVES」の特徴として挙げられるのは、音楽を主役とした「プレイリスト・ムービー」と呼ばれることである。タイラー・ザ・クリエイター、SZA、フランク・オーシャンなど、今の音楽シーンをリードする豪華アーティスト陣による31の名曲が大きな役割を買っているのだ。トレイ・エドワード・シュルツ監督は、使用する楽曲のプレイリストを作成し、そこから着想を得て脚本執筆に取り掛かったようだ。全ての曲が登場人物の個性や感情に寄り添うように使用され、時には音楽がセリフの代わりに登場人物の心の声を伝えている作品となっている。

 

そんな作品である『WAVES/ウェイブス』の監督トレイ・エドワード・シュルツにインタビューをする機会を頂いた。彼はカニエ・ウェストに対する想いや、ケンドリック・ラマー、フランク・オーシャンの楽曲を使用したことについてなどを語っている。

 

Q:『WAVES/ウェイブス』のアイデアはどこから生まれたのですか?

監督:10年以上前から漠然と考えていたアイデアなんだ。でも最初から映画を作ろうと決めていたわけではない。高校時代、映画『バッド・チューニング』、『ブギーナイツ』、『グッドフェローズ』、『アメリカン・グラフィティ』などにハマり、ティーンと音楽というテーマで何かを作りたいと思ったのが原点だった。でも当時は、ストーリーなんてまったく組み立てていなかった。『WAVES/ウェイブス』は僕の体験がもとになっている半自伝的な作品なんだけど、この10年の間にストーリーは進化を繰り返していき、やっと映画としての枠組みができたのさ。

 

Q:『WAVES/ウェイブス』はサウンドトラックがとにかく素晴らしく、各時代の名曲が使われていますが、どのように選曲したのですか?

監督:高校時代、音楽は僕にとって欠かせないもので、常にいいサウンドを探し求めていた。ラジオから流れてくる曲だけじゃない。10年前の曲、5年前の曲、2年前の曲など、とにかく幅広く聴き漁っていた。今でもそれは変わらないね。その頃から、いつか使えそうな曲を集めて、プレイリストを作っていったんだ。各キャラクター、各シーンに使う曲を厳選し始めたのは、脚本の執筆を始めてからだ。主人公のタイラーとエミリーも、僕と同じように時代を選ばず曲を聴くはずだと感じ、最近の曲だけではなく10年以上前のものも用いることにした。彼らも純粋に心に響く音楽に惹かれるタイプだと思ったんだ。曲はそれぞれストーリーを語っている。映画の物語と共鳴しているのが分かるはずだ。

 

Q:映画で使った曲の中で、特に思い入れが強いものはありますか?

監督:ロードトリップのシーンで、フランク・オーシャンの「Seigfried」が流れるんだけど、彼の『Blonde』は僕が最も好きなアルバムの一つで、「Seigfried」は僕の恋人が最も好きな曲なんだ。そのシーンを見事にとらえていて、正直でありつつも脆い。そこが美しいと思った。あのアルバムはいつ聴いても素晴らしいね。フランク本人が誰かに聞いた物語、もしくはフランク本人が歩んできた人生を体験しているような気分になる。「Seigfried」を用いたシーンでは、主人公が好きな人と旅に出て、自由を肌身で感じるんだ。納得がいくまで何度も編集していたら、最後は僕も泣き崩れてしまった。音楽とビジュアルが見事にシンクロして、心を強く突き動かされたからだ。

 

Q:『WAVES/ウェイブス』は監督にとってパーソナルな内容ですが 、今の若者たちをとらえています。リサーチはどのようにしたのですか?

監督:基本的には僕の高校時代、僕の恋人の高校時代、ケルヴィン・ハリソン・Jrの高校時代の経験を参考にしている。体験自体もそうだし、周囲からのプレッシャーや悩みなど10代特有の感情もそうだ。また今の10代を理解するために、SNSやウェブサイトなどを徹底的に調べた。実際に若者と会って話し、脚本を読んでもらって、率直なフィードバックを基に修正を加えていった。今の10代も僕たちの頃とさほど変わらないことが分かった。違うのはインスタグラムなど使うツールだけだ。

 

Q:作中の若者たち、特にタイラーは大きな重圧がのしかかっています。今の10代もご自身と同じようなプレッシャーに苦しんでいると感じたのでしょうか?

監督:そうだね。歩んできた道のりや観点によっても異なると思う。主人公のタイラーは僕とケルヴィンを融合させたような人物だ。僕たち2人は、とてつもないプレッシャーの中で育ってきた。両親の期待が大きく、重い責任を担っていたんだ。

僕に関して言うと、高校時代にレスリングをしていて、タイラーのように肩を痛めたんだ。さらに両親の仕事を手伝い、勉強も決して手を抜けなかった。周囲からは大人として扱われるし一杯一杯だったのさ。身動きが取れず、かわす方法もないから、何でもストレートに受け止めてしまっていた。失敗は許されないと、常にストレスを抱えていたのを覚えているよ。

ケルヴィンにとっては、それが音楽だった。ニューオーリンズで生まれ育ったケルヴィンは、素晴らしいミュージシャンと歌手を両親に持っている。だから彼も音楽の道を進むのが当然の流れだった。両親の期待も相当で、神童のように育てられたらしい。

 

Q:本作では黒人の家族が描かれていますが、それもケルヴィンの視点を参考にしたのでしょうか?

監督:そう、ケルヴィンだ。ケルヴィンとは僕の前作『イット・カムズ・アット・ナイト』で出会い、驚くほど意気投合したから、絶対にまた彼と仕事をしたいと思っていた。本作のアイデアをケルヴィンに話した時、彼はタイラーの役にすぐ共感したらしい。それからはテキストメッセージを送ったり、電話をしたりして、互いの過去のこと、両親や恋人との関係のこと、当時感じていたプレッシャーなどについて語り合った。そのやりとりを僕たちは”セラピーセッション“と呼んでいんだんだけどね。だから脚本を書きながら、ケルヴィンの黒人としての視点を取り入れるのは、ごく自然の流れだった。ケルヴィンは脚本の第一稿を読んだ数少ない人物の一人だ。撮影に入る8か月前だった。それ以降もケルヴィンからのコメントを参考にして改訂を重ねていった。それは他のキャストが加わってからも同じだ。僕は、”みんなの意見は聞いているよ。一緒に作っていこう”とスタンスだった。みんなの話に耳を傾け、それを作品に反映していったんだ。だからキャスト全員にとって、半自伝的な内容に仕上がったと思う。全体の8割は、各々が生きてきた人生なんだ。

 

Q:画面比が変わったり、360度カメラを使ったり、ユニークかつ多様なスタイルを用いていますが、それはどこからくるのでしょうか?

監督:これまでの経験が積み重なった結果だと思う。長編デビュー作『『クリシャ』』から始まっている。『イット・カムズ・アット・ナイト』はより客観的な作りだから、どちらかと言うと本作は『『クリシャ』』に近いかもね。主人公に共感し、没入していくタイプの作品だ。20代の時、テレンス・マリック監督の下で働いていたんだけど、彼の影響は大きい。彼は彼にしかできない映画作りをしていて、独自のスタイルを確立しているから、彼のマネをしても無駄なだけだった。だから僕にできることを見つけなければいけなかった。その後、短編で失敗を繰り返しながら模索していき、『『クリシャ』』でやっと僕のスタイルを発見できた。周囲もそれに反応してくれたんだ。登場人物の心情を表すためにはどう撮るのがベストか、本作でも常に意識していたよ。

 

 

➖カニエ・ウエストに対する想い

 

監督僕はずっと前からカニエのファンなんだ。とてつもなく魅力のある人物だと思う。音楽の天才だし、彼の作品はどれも好きだ。タイラーのシーンで『I AM A GOD』を使ったのは、ある意味リアルだったからだ。彼の頭の中では、あのような音楽が流れているに間違いないし、頭から溢れ出して周囲まで浸してしまっているんだ。

タイラーの部屋に『THE LIFE OF PABLO』のポスターが貼ってあるのは、このアルバム自体が自分と闘っている男を表しているからさ。『THE LIFE OF PABLO』のリリースは、タイラーや友人たちにとってもビッグな出来事だったはずと想像したんだ。

カニエは尊敬しているし、彼の精神はこの作品にあらゆる形で映し出されている。

 

また、彼は2017年7月の記事ではこのように語っている。

 

監督カニエ・ウェストの伝記映画を作りたいという夢がある。彼が僕の作品を観て、もし気に入ってくれたら、彼の脳みそを覗かせてくれて、彼という人間が分かる今までになかったような伝記ができるかもしれない。彼は本当に追究しがいがあると思う。カニエとリラックスして、最高の作品を作れたらうれしい。僕が次に考えている作品(きっとWAVESのこと)は、きっと彼も気に入ってくれると思うよ。

 

 

➖カニエ、ケンドリック、フランクの楽曲の使用について

 

>ケンドリックの『BACKSEAT FREESTYLE』は許可が出る前に撮影した

監督この作品は様々なリスクを伴っていたが、思い切って挑戦してみたかったんだ。(キャンプファイヤのシーンで)ケンドリックの曲を使うことは最初から決めていたから、他の曲で撮ることなんて考えもしなかった。もし曲使用の許可が出なかったら、代替案はそのシーンをカットすることだった。もしそうなっていたら、本当に悲惨だったね!

 

>WAVESはなぜこれだけの大物アーティストからOKが出たのか?

ランドール・ポスター(音楽監修)金額を釣り上げて頼み込んだわけではない。この作品に参加することは、斬新なビジョンを持つ監督と組むことを意味する。アーティストは誰だって、そういうプロジェクトに惹かれると思うんだ。

 

>フランク・オーシャンの楽曲使用について

監督フランク・オーシャンはこれまでに5曲も使用を許可したことがなく、彼を説得するのに何か月もかかった。最初は彼のチームに、今は創作活動に没頭しているから難しいと言われたんだ。その後、1曲に減らせないかと提案された時はパニックに陥ったよ。でも僕から手紙とラフカットを送ったら、時間を割いて見てくれて、全曲使用していいと言ってくれたんだ。(それも減額して)

ランドール・ポスター:フランク・オーシャンがいなければ、この作品は成り立たなかった。彼から返事をもらった時は、”これでエモーションの真髄の部分は大丈夫だ“と全員で安堵の息をついたよ。

 

 

また監督は「ミュージカルみたいだと誰かに言われたんだけど、僕はカメラがダンスをしていると思っている。そのアイデアがすごく気に入っているんだ。」と発言しており、カメラワークにも注目だ。

 

 

➖キャスティング

 

ケルヴィン・ハリソン・Jrについて

監督『イット・カムズ・アット・ナイト』に出演してもらって、彼の才能にぶっ飛んだんだ。まだ若いのに頭が切れるし、この子は最高だと思った。これ以上の役者はいないとね。それが数年前で、今では親友の一人さ。人間的にもすばらしいし、才能にもあふれている。最近はますますよくなっているし、しっかりと考えて役を選んでいるし、さらに進化しているよ。世界中に彼の才能を知ってもらいたいんだ。

 

テイラー・ラッセルについて

監督テイラーは従来の方法でオーディションを行った。彼女から届いたテープを見て、大きな衝撃を受けた。内側でいろんな感情が渦巻いているような気がした。表情だけで心情をあそこまで表現できるのは、すごいことだと思う。複雑で奥行きのある演技だった。その後、スカイプで話したんだけど、ルーカスと同じように特別な繋がりを感じた。その後、テイラーはLAでケルヴィンとルーカスと顔合わせをしたんだ。彼女とテイラーの相性はばっちりだったね。ロードトリップのシーンも、まるでドキュメンタリーを撮っているようだった。テイラーは役に女性的視点も加えてくれて、おかげで格段によくなった。

 

ルーカス・ヘッジズについて

監督:『マンチェスター・バイ・ザ・シー』が大好きで、特にルーカスのファンだったんだ。彼も僕の作品を観てくれていて、彼から連絡してきてくれたのさ。会った瞬間に意気投合した。うまく説明はできないけど、どこか深いところで繋がっている気がしたんだ。バーガーを食べながら、楽しく話したのを覚えているよ。

 

アレクサ・デミーについて

監督:彼女は最後にキャスティングした。彼女に役を合せるために調整を加えたんだ。

アレクサ:役が決まったのはフロリダで撮影が始まる1週間ほど前だったから、とにかくケルヴィンと多くの時間を過ごして、役作りをしたの。共依存に関するリサ・A・ロマーノのビデオを見たりした。

 

 

➖キャストからのコメント

 

テイラー・ラッセルケルヴィンの親友と同じセットで働いていて、2人がフェイスタイムで話していたの。ケルヴィンが既にトレイと作品について話し合っていた頃ね。8か月くらい経っていたのかしら。その時、ケルヴィンに挨拶をしたら、彼から「WAVESという作品があるんだけど、君は僕の妹役にいいかもの」と言ってくれたの。その時は「いいわね、ありがとう」くらいの返事をしなかったんだけど、その夜、私のエージェントからWAVES用のオーディションテープについてメールがあったのよ。ケルヴィンとは全く関連のない形で。運命のように感じたわ。

ケルヴィンには、トレイとのそれまでのプロセスを色々と聞いたわ。そして役に決まってからは、読んだ詩の感想や、私が書いた文章や、聴いた音楽などを送って、私がエミリーに抱いている感情や印象を伝えたの。エミリーとは最初から対話が生まれていた気がする。トレイは私のクリエイティブな工程に口出しはしなかったわ。自由に感じさせてくれた。

 

Q: 共演者から子供の頃の写真をもらったという噂は?

テイラー偶然、ケルヴィンの赤ちゃんの頃の写真を見て、彼に対する見方が変わったの。タイラーへの愛情がさらに深まって、彼との歴史が築けた気がした。だからスターリングからも子供の頃の写真をもらい、ケルヴィンにも追加でもらった。ルーカスのもたくさん借りたわ。映画の撮影工程において、これは私にとってとても大切なことだった。初めての試みだったけど、私の中で大きな閃きがあったのよ。

 

ルーカス僕がこれまでに演じてきた役はどれもケルヴィンが演じているタイラーにどことなく似ていて、大きなプレシャーを感じながら生きているんだ。どの作品でも泣いていると茶化されたこともある。次第にどの役も僕らしさが反映されていないと感じるようになった。だから今回のピュアなラブストーリーに飛び付いたんだ。純粋なラブストーリーという点に惹かれた。

トレイはカメラの使い方が独特で、目の前にあるものをそのまま捉える才能があるんだ。偽りがないし、見てもらうと分かるんだけど、シンプルな美しさがあるのさ。僕とテイラーの演技を完璧に収めてくれた。

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