サンプリングはヒップホップにおける重要な要素の一つである。70年代前半にニューヨークのサウス・ブロンクスにて生まれたヒップホップは、既存の楽曲のブレイク部分を2つのターンテーブルで繋げる手法で人々を踊らせたのもあり、ヒップホップ・ビートにおいてサンプリングは欠かせない要素となっている。サンプリングへの愛を語るプロデューサー/アーティストは多く、EvidenceやDJ Premierはサンプリングという手法を「アート」と呼んでいる。そんなヒップホップの名曲へと生まれ変わった、元ネタの名曲たち5つ紹介したい。
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・50 Cent – In Da Club(2003年)
元ネタ:The Miami Bass DJ’s – The Birthday Jam (It’s Your Birthday)(1994年)
1994年にリリースされた楽曲。こちらは「Go grandad / grandma, it’s Your Birthday(おじいちゃん、おばあちゃん、誕生日だよ!)」とサビで繰り返す陽気な楽曲であるが、50 Centは2003年の「In Da Club」でこのフレーズを「Go shawty, it’s your birthday」に変えて新たな曲を生み出しており、愛欲まみれたハードなパーティーについてラップしている。
・Dr. Dre – The Next Episode(2000年)
元ネタ:David McCallum – The Edge(1967年)
故David Axelrod(デイビッド・アクセルロッド)が手掛けたこちらの楽曲は、Dr. Dreのヒット曲「The Next Episode」で全面的ににサンプリングされている。デイビッド・アクセルロッドは実は元々サンプリングが大嫌いで、生前のコンサートにて彼が「私はサンプリングというものが大嫌いだった。ミュージシャンの仕事を奪っていると思っていた。でも実際にはサンプリングのおかげで”全部Fuckだ!”って言えるレベルのお金が入ったんだよ。だから私は今ではサンプリングを愛してる。ありがとうドレー。」と語ったというエピソードがある。
・A Tribe Called Quest – Can I Kick It?(1990年)
元ネタ:Lou Reed – Walk on the Wild Side(1972年)
ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのボーカリスト/ギタリストとして活躍をしたレジェンド、故Lou Reed (ルー・リード)の楽曲。ベースのサウンドが印象的な「Walk on the Wild Side」は彼の2ndアルバム「Transformer」に収録されており、同アルバムはDavid Bowie(デヴィッド・ボウイ)とMick Ronson(ミック・ロンソン)がプロデュースを手がけたことでも知られている。
・The Notorious B.I.G. – Juicy(1994年)
元ネタ:Mtume – Juicy Fruit(1983年)
Mtumeが1983年にリリースした「Juicy Fruit」はBillboard Hot Black Singlesで8週に渡り1位にチャートインしたヒット曲である。
・ Tyler, the Creator – WUSYANAME(2021年)
元ネタ:H-Town – Back Seat (Wit No Sheets)(1994年)
テキサス州ヒューストンのR&Bグループ、H-Townの楽曲。タイラー・ザ・クリエイターは、新アルバム「CALL ME IF YOU GET LOST」に収録されている楽曲「WUSYANAME」で「Back Seat (Wit No Sheets)」をサンプリングしている。