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Childish Gambino が新曲「This Is America」で示唆する問題とは

text: Shota Koizumi

 

Childish GambinoことDonald Gloverが2016年に発表したアルバム『Awaken, My Love!』ぶりとなる新曲「This Is America」をリリースした。

 

 

まず、Gambinoは自身が司会を務めたTV番組『Saturday Night Live』の放送中に「Saturday」と「This Is America」の二つの新曲を披露。「This Is America」は、冒頭に流れるギターの音色のイメージとは打って変わり、途中でベースが効いたHiphopビートに転調する構成で、『Saturday Night Live』の放送終了後には日本人映像監督であるHiro Murai のディレクションによるMVも公開された。衝撃的な冒頭のシーンなどに象徴されるように、アフリカン・アメリカンへの人種問題に着目した内容が話題となり、Twitterのトレンド・ワードもChildish Gambinoの関連フレーズに占拠されるほどだった。

 

また、MVの終盤にはSZAもカメオ出演しているほか、ソング・ライティングや曲中のアドリブには21 Savage、Blocboy JB、Slim Jxmmi (Rae Sremmurd)、Quavo(MIGOS)、Young Thugらも参加している。

 

This is America

SZAさん(@sza)がシェアした投稿 –

 

MV内では初盤からGambinoが男性を射殺するショッキングなシーンが流れる。当初、ギターを弾いた後に射殺されるこの男性がは、Trayvon Martin の実父であるTracy Martinではないかとネット上で話題が広がったが、結果、この男性は西海岸を拠点とする俳優兼ミュージシャンのCalvin The Secondということが分かった。このことは、Calvinが 自身のInstagram上で明らかにした。

 

 

Trayvon Martinは、2012年2月26日の夜、フロリダ州のサンフォードにおいてヒスパニック系の混血である自警団員だったGeorge Zimmermanに射殺されたアフリカン・アメリカンであり、当時はまだ17歳の男子高校生であった。逮捕ののちに裁判にかけられたZimmermanだったが、結果、無罪判決が下されたことによりアメリカ全土に抗議の声が殺到。このことが、Black Lives Matter運動への大きな引き金にもなった。

 

加えて、「This Is America」のMV内において教会でゴスペルを歌う子供たちを一度に射殺するシーンは、2015年6月17日、Dylann Roofがエピスコパル・チャーチを襲撃し、男女9人を射殺した事件を彷彿とさせる。エピスコパル・チャーチはアフリカン・アメリカンらが多く通う教会であり、犯人のDylann Roofは、前述したTrayvon Martin射殺事件に触発されて人種問題を意識したと語っていた。なお、Roofにはすでに死刑判決が下されている。

 

「This Is America」の歌詞、そしてMVの内容からは、Childish Gambinoが人種差別や警官による暴行といった問題、そして、銃規制の問題などをテーマにしていることが分かる。歌詞には”I know you wanna party (ただ、パーティーしたいだけなんだろ)”という箇所もあり、暴動が起きるなかで享楽的なダンスを披露しているとも読み取れるMVからは、現在、ヒット曲を量産しているブラック・カルチャーの在り方、そして扱われ方についても、問題視しているようにも見える。

 

なお、Chaildish Gambinoは歌手名義としては最後の作品となるアルバムを準備中である他、7月からは北米と欧米数カ所を回る<This Is America Tour>を慣行予定だ。

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