Dr. Dre(ドクター・ドレー)といえば、音楽制作に対する愛が非常に強い完璧主義者として知られている。彼が3rdアルバムとしてリリースする予定であった「Detox」はいまだに幻のアルバムとして神話のように語り継がれており、同作品が公開されない理由についても、関係者であるAkonなどのアーティストが過去に話していた。そんなドレーと共に仕事をするとはどういうことなのか、ベテランプロデューサーのMark BatsonがHipHop-N-Moreのインタビューで語った内容を紹介したい。
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「最高レベルの完成度といえば、ドレーは完璧主義者なので、全ての曲がリリースされるわけではないですよね。その中にはあなたが関わった楽曲も含まれていると思いますが、リリースされないことにフラストレーションを感じることはありますか?」と質問を受けたMark Batsonは以下のように答えている。
ドレーと仕事をするなら、どのようなシステムで楽曲制作が行われるのかを理解して、それをリスペクトしないといけない。そしてそこまで感情的にならないほうがいい。歴史の中で最も素晴らしいビートが出来たと思っても、ドレーが気に入らないということがある。私たちは前に進むしかないんだ。曲を聞かせて「あー…」と一言だけ言われることもある。最もハードな批評だよ。それに耐えられない人も多いと思うが、私は新しいアイデアを考えたり、完璧なビートを探し求めたりすることをエンジョイしているよ。私が作った未公開曲の中にはドレー、Jay-Z、Nas、50 Cent、エミネム、そしてThe Gameとの曲があるが、きっと今後も未公開のままだろう。ドレーと長年一緒に仕事をしていると、彼が音楽を作ること自体をエンジョイしていることがわかる。みんなが全ての曲を聞く必要はないと、自分のエゴをコントロールできる人だ。このシステムがあるから、最初から最後まで聞ける、最高のアルバムを世に出すことが出来る。時には、100曲をレコーディングして、その中からリリースされるのが1曲だけということもある。
ドレーがいかに完璧主義者かを説明したMark Batson。この話を聞いたインタビュアーは「ドレーのレーベル、Aftermath Entertainmentの関係者と話すときに必ずしている質問なのですが、Detoxがリリースされることはあるんですか?(笑)」と続けている。
最終的に、私は最低でも200曲以上は「Detox」のためにレコーディングした。様々なトラックを彼に送って提案したが、曲を作り始める段階で選んでもらえたのですら数曲だけだ。彼はある時点で、自分が向かっている方向性が気に入らないと気づいたんだ。そしてリリースをしないと決めた。しかし彼はThe Gameのアルバム「The Documentary」に収録されている楽曲「Higher」を制作した時に、「Detox」を作る活力を取り戻した。曲の最後に「look out for Detox」と言っているくらいだ。しかしながら、Anthony Hamiltonから言われたことをたまに思い出んだ。「君はすぐワクワクするけど、同じくらい早く退屈になってしまう」と。これは、無限のクリエイティビティがあったり、物作りを愛している人にたまに起きることだ。その瞬間に好きなものを作り、前に進む。ドレーは俺が「Detox」のアルバムのトラックリストだと思っていた全曲をお蔵入りにしてきた。6ヶ月聞いて、「Ehhh.」とだけ表現するんだ。チームのメンバーたちは彼に楽曲をリリースしてほしいと思っているはずだ。ドレーにとっては新鮮ではなくても、ほとんどの人にとっては新しいものだからね。だが彼は完璧主義者だし、創作に対する精神などもある。ドレーは創作のプロセスを愛しているんだ。時に、アートを創っていること自体に満足することもあって、個人的に楽しむんだ。そして次の別のことに進む。