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【RIP】MF DOOMが悪役キャラとしてマスクをつけた理由とは?アンダーグラウンドのレジェンド、MF DOOMが作り上げた世界観

 

 

先日、MF DOOM(エム・エフ・ドゥーム)が2020年の10月31日に亡くなっていたと遺族からが公表があった。死因は明かされていないが、アンダーグラウンドのレジェンドの訃報に多くのアーティストたちが追悼のメッセージをSNSなどで公開している。

 

今回は、ヒップホップの悪役キャラとして知られるそんな彼の功績や、マスクをつけた理由とその意味などをHipHopDXPlayatunerを参考に紹介したい。

 

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1971年にロンドンで生まれたMF DOOMは、幼少期にニューヨークのロングアイランドに移住した。1988年に実の弟であるDJ Subroc、そしてもう一人のMCであるRodanと共に、Zev Love X名義で「KMD」というヒップホップグループを結成した。彼らはデビューアルバム「Mr. Hood」などをきっかけに成功を掴みつつあったが、2ndアルバム「Black Bastards」をリリースするタイミングでDJ Subrocが交通事故で亡くなり、同事故と同じ週にKMDがElektra Recordsとの契約を切られるという2つの悲劇が起きた。

 





実の弟であるDJ Subrocを亡くした傷心の中でレーベルからも見捨てられたZev Love Xは、一時期マンハッタンでホームレスとして生活をしていたという。これらの悲劇をきっかけに、Zev Love XはマーベルコミックのスーパーヴィランDoctor Doom(ドクター・ドゥーム)と似たマスクを身につけたヒップホップの悪役キャラとして「業界への復讐」を決意し、MF DOOMとなったのだ。それから彼が1999年にリリースしたデビューアルバム「Operation: Doomsday」は多くのメディアなどから評価され、2004年にリリースされた「Mm…Food」はヒップホップの名コンセプト・アルバムとして語り継がれている。また、MadlibとのMadvillianや、Danger MouseとのDanger Doomなどのコラボプロジェクトも非常に高く評価されており、彼が関わった作品たちは、現在に至るまでヒップホップの名作アルバムとして人気を得続けている。

 

そんなMF DOOMにとって、「マスク」とはどのような意味があったのだろうか?彼はRed Bullのインタビューにて「何故マスクをしようと思ったのですか?」と質問を受けた際に、以下のように語っていた。(和訳: Playatuner

 





俺のマスクか?なんかヒップホップが「音」ではなくて「見た目」重視になった時期があると思うんだ。昔はMCがどんな見た目をしているかなんて、ライブにいかないとわからなかったんだ。逆にビデオとかを見る前にライブで見ていたりすることもあったけど。だから昔は「見た目」じゃなくてレコードの良さだったり、スキルで判断していたんだ。でも金儲けのための「ビジネス」になってきて、「音」を売るのではなく、「見た目」でどうにかしようとするアイディアが生まれた。

 

ヒップホップが、音ではなく見た目を重視するようになった時期があると説明したMF DOOM。彼は以下のように続けている。

 

大切なのはそのアーティストが「どんな音を出すか」だ。だからこのマスクはアーティスト「人」として売ろうとしている業界にたいしての反乱を象徴している。自分の顔が売れるとかはどうでもいいんだ。だから自分の見た目/性別/国籍/人種とか関係なしに、自分の心を出したい人であればこの「悪役」マスクは誰がつけてもいいんだ。

 

「アーティストがどのような音を出すか」に注目させるため、業界に対する反乱としてマスクを身につけるようになったと語ったMF DOOM。そのなかでも、マスク姿で「悪役」を演じ、マスクという「見た目」さえも自身のトレードマークの一つとなった業界に対する皮肉も、「悪役キャラ」の世界観を作り上げる要因と言っても過言ではないだろう。また、ヒップホップの歴史の中でもトップクラスの言葉遊びやリリシズム、キャラ作りなどが評価されてきた彼は、同インタビュー中に自身のリリカルスタイルについてもこのように語っていた。

 

「リリックを書く際に、曲を聞く側の視点からも同時に考えるんだ。不意をつけるように、面白くしたい。ライムの本質とは、聞く側の不意を少しつくことだろう。だから俺は例えば、一つの言葉を空白のままにすることで、リスナーたち自身にその空白を埋めさせる。だが常に、最低でも期待通りの言葉を入れておくんだ。あるいは期待していた言葉と近く、確かにそうだなと思えるような筋の通った言葉を別の形で入れる。これにより自分のウィットを出し、ストーリーを面白くするんだ。このようなリスナーたちとの対話が残っているから、俺にとってもより面白いものになる。」

 





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