新アルバム「Donda」のリリース予定日が度々変更され、3度目のリスニング・パーティーが行われることが話題になっているカニエであるが、彼の過去作品が公開されるまでの経緯やエピソードを引き続き紹介したい。前編は以下のリンクからチェック。
【前篇】カニエ・ウェスト歴代アルバムのリリース当時を振り返る。リリースまでの経緯やエピソードを紹介
My Beautiful Dark Twisted Fantasy(2010年)
「My Beautiful Dark Twisted Fantasy」がリリースされる前年、2009年に行われたMTVビデオ・ミュージック・アワードにて、ベストフィメールビデオ賞を受賞したテイラー・スウィフト。彼女のスピーチ中にカニエがマイクを奪うという事件を覚えている人も多いだろう。彼女のスピーチを中断し、マイクを奪ったカニエは「テイラー、俺は君が受賞して嬉しいけど、これだけは言わせてくれ。ビヨンセは歴史上、最も素晴らしいMVを作ったんだ!」と発言をした。この行動が多方面から批判を受けたカニエは、音楽制作を一時休止してしまったのだ。しばらく隠居状態を続けた彼は、最終的にハワイに六ヶ月間移住するという選択をし、Kid Cudi、Nicki Minaj、Pusha Tなどのアーティストを招き、ついに音楽活動を再開した。
それからリードシングル「Power」を5月にリリースし、表舞台に戻ってきたカニエは、「GOOD Fridays」と題して「Monster」などの新曲を数週間連続で無料配信し続けた。そして2010年の9月に行われたMTVビデオ・ミュージック・アワードに再び出演したカニエは、そこで楽曲「Runaway」を初披露したのである。
また、「My Beautiful Dark Twisted Fantasy」はリリース予定日が変更されなかったカニエのアルバムの内の数少ない1枚でもある。
Watch the Throne(2011年)
2010年の10月に、「Jay-Zとコラボアルバムをリリースする」とツイッターにて発表したカニエ。彼は後にMTVに「元々はEPになる予定だった」という旨を伝えている。
2011年の1月に先行公開されたシングル曲「H•A•M」は当初のアルバムの方向性を反映していたが、Jay-Zは同曲について「この曲がリリースされた後に、アルバムの最終的な方向性は変更された。ドラマティックさを引き下げ、より計算的な内容になった。」と語っている。キックオフとなったシングル曲をリリースした二人であるが、彼らはその後スタジオにこもり、次に新曲を公開したのは同年の6月だった。
「Watch the Throne」がリリースされるまでのエピソードの中でも、特に話題になったのは、彼らの「Otis」をDJ Funkmaster FlexがHot 97でオンエアした時だろう。DJ Funkmaster Flexは「Otis」を約30分間流し続けたのである。
Yeezus(2013年)
「Yeezus」も、カニエにとって新たなスタイルを切り開いた作品であった。カニエは2013年の5月に、「6月18日」とだけツイートをし、同アルバムの存在を明かした。5月18日に「New Slaves」と「Black Skinheads」をSaturday Night Liveで披露したカニエであるが、そのスタイルは初期の「チップマンク・ソウル」的なサウンドとは違かった。
しかしアルバムがリリースされる一週前に内容が流出してしまった「Yeezus」の初週売上は約327,000枚となっている。カニエにとっては少ない売上であるが、同アルバムはBillboard 200では初登場1位にチャートインしている。こちらのアルバムも「My Beautiful Dark Twisted Fantasy」などと同じく、当初の公開予定日を変更することなくリリースされたカニエのアルバムの内の1枚である。
The Life of Pablo(2016年)
当初は「So Help Me God」というタイトルで2014年にリリースされる予定だったこちらのアルバム。カニエはその後「SHMG」、「Swish」、「Waves」と数回タイトルを変更しており、彼が最後に決定したタイトルが「The Life of Pablo」であった。
「The Life of Pablo」がリリースされるまでの出来事も印象的な内容が多く、彼はアルバムのタイトルを変更する度に新たな楽曲をリリースしていた。Paul McCartney(ポール・マッカートニー)とRihanna(リアーナ)をフィーチャーした豪華なコラボ曲「FourFiveSeconds」がリリースされたときは、アルバム名が「SHMG」になると告知していた。
アルバムが正式にリリースされる二日前。カニエは2016年のマディソン・スクエア・ガーデンで行われたニューヨーク・ファッションウィークで、「Yeezy Season 3」のアパレルラインを発表し、出席者はそこで「The Life of Pablo」を視聴することができたのである。マディソン・スクエア・ガーデンで初となった大規模なファッションショー×リスニングセッションには、Kid Cudi、Pusha-T、50 Cent、A$AP Rocky、2 Chainz、カーダシアン家とジェンナー家、さらには当時Yeezyのモデルを務めていたLil Yachtyなどが参加した。
ye、KIDS SEE GHOSTS(2018年)
当時、7曲入りのアルバムを2枚リリースし、話題になったカニエ。これらのアルバムがリリースされる前、2018年の5月頃、TMZに対するカニエの発言が批判されていた。彼は奴隷制について「自分で状況を選択できた」と話しており、批判されたカニエは後に声明を取り下げ、音楽に集中すると語っていた。この頃カニエはPusha-T(プシャ・T)のアルバム「Daytona」もプロデュースしており、同アルバムがリリースされた後、カニエは友人たちやメディアを招待し、ワイオミング州のジャクソンホールにてリスニング・パーティーを開催した。こちらのリスニング・パーティーはライブ配信され、その後6月1日にリリースされた「Ye」はBillboard 200では1位にチャートインしている。
JESUS IS KING(2019年)
今作から、より宗教的な音楽を制作するようになったカニエ。当初「Yandhi」というアルバムをリリースすると発表していたカニエだったが、リリース予定日の変更を経て、「Yandhi」を公開することなく、最終的に「JESUS IS KING」をリリースすると発表していた。カニエは「JESUS IS KING」のリリースに先立って、アルバムと同名のドキュメンタリー映画をIMAXで公開しており、「ローデン・クレーター」をモチーフとしたアートポスターが話題になった。
この頃から聖歌隊「Sunday Service」を結成し、フリースタイルなどを披露していたカニエであるが、「JESUS IS KING」のリリース日が不明のまま、さらに別のアルバム「Jesus Is Born」をクリスマスにリリースすると発表した。その後、本来なら9月にリリースされる予定だった「JESUS IS KING」は、無事に10月25日にリリースされている。また、「Jesus Is Born」は予定通り12月25日にリリースされている。