NEWS

UKドリルシーンのパイオニアDigga D 全英1位を獲得した『Noughty By Nature』で表現した多面性

 

 

2022年4月15日にリリースされたDigga Dの最新ミックステープ『Noughty By Nature』。UKドリルのシーンのパイオニアとして注目を浴びる、ウェストロンドン出身のDigga Dは、2016年に「Play For The Pagans」などのアンダーグラウンド・アンセムを生み、2019年に発表したシングル「No Diet」は、ソロのドリル楽曲としてチャートの最高位に達した。

 

2019年にリリースしたデビュー・ミックステープ『Double Tap Diaries』では、フィジカル商品の売り上げを、高層住宅棟グレンフェル・タワーで発生した火災の財団に寄付。その後、2020年のAIMインディペンデントミュージックアワードでは、その年最多の3部門ノミネートとなり、2021年に発表したミックステープ『Made In The Pyrex』は自身初の全英チャートTop3入りとなった。

 

【関連記事】21歳のUKドリルシーンのパイオニア、Digga Dが最新作『Noughty By Nature』で全英1位を獲得

 

そんなDigga Dの最新ミックステープ『Noughty By Nature』は、全英チャート初登場1位を獲得し、ドリルシーンをメインストリームまで押し上げた。『Noughty By Nature』ではUKの若者が直面する残酷なストリートの現実が描かれている。Digga Dは2017年に、MVの撮影中にライバルギャングへの襲撃を企てていたとして逮捕され、2018年にCBO(Criminal Behaviour Order)と呼ばれる監視プログラムに置かれた。楽曲のリリックを警察に提出し、了承を得ないとリリースできず、さらには具体的な人名、ギャング、事件などをリリックに入れてはいけないという制限も設けられている。そのため、『Noughty By Nature』でも多くの言葉がセンサーされている。

 





 

多くの人名や地名がセンサーされているリリックであるが、そのなかでも自伝的な内容である1曲目「Intro」では、「私がラップする全てのことは真実だ/あいつらがラップする全てのことは嘘で、誇張されている」という言葉から始まる。このアルバムでは、以前のDigga D作品のように、残酷なストリートな現実をラップしたドリルの楽曲が多く、実際に彼が見てきたギャング関連の事件についてのリリックが多いが、そのような人生を生きることによって起きる悲惨な結果についてもラップをしている。2Pacが生前のインタビューで、「殺人や死についてラップするのにそれに伴う“痛み”についてラップしないのは無責任だ。泥棒や犯罪についてラップするのにそれ伴う“償い、刑務所、死”についてラップしないのも無責任だ」と語っていたが、特に「Addicted」のような楽曲にて、Digga Dは今まで多く見せてこなかったドリルに対する複雑な感情を表現している。

 





 

また、このアルバムで印象的なのは、50 CentやG-Unitといった、2000年代のヒップホップに対するリスペクトだろう。「Pump 101」では、G-Unitの1stアルバム『Beg For Mercy』のヒットシングル「Stunt 101」を大々的にサンプリングしている。2000代ヒップホップのキャッチーなビートを使用したこちらの楽曲は、UKシングルチャートで9位にランクイン。また、「Hold It Down」では、50 Centの大ヒット曲「21 Questions」をサンプリング。「自分が刑務所に入っても、あなたは愛してくれますか?」という、原曲と同じテーマの「Hold It Down」では、ドリルからメインストリームに足を踏み入れたDigga Dのラッパーとしての幅の広さと才能を聞くことができる。

 





 

Shares

RELATED POSTS

VIEW MORE