text: Shiho Watanabe
1997年、ブルックリン生まれ。シングル、「Panda」がカニエ・ウエストのアルバム『The Life Of Pablo』に収録された「Father Stretch My Hands Pt.2」にサンプリングされ、シングルは空前のヒット。ビルボード・チャートでも第1位を獲得し、以後、7週間にわたってチャートのTOP5に君臨した。フィーチャリング・ゲストなしのラップ楽曲がここまで大きい記録を打ち立てたのは、このデザイナーが初めてだ。加えて、ラッパーとしてのキャリアもスタートしたばかりに関わらず、いきなりカニエ率いるG.O.O.D Musicへ加入するなど、スター・ラッパーとしてのキャリアを順調に歩んでいる。他に、Mura Masa 「All Around The World」、BTS「Mic Drop(Steve Aoki Remix)」といったシングルにもフィーチャリング・アーティストとして参加しており、常に世界からの期待を集める存在でもある。そんなデザイナーが、最新EP『L.O.D.』を完成させ、エクスクルーシヴ・インタヴューに応じてくれた。
ーインタヴューに応じてくださり、ありがとうございます。日本のメディアであなたにインタヴューを敢行するのは、今回が初めてなんです。
デザイナー(以下 D): ハロー、俺はデザイナー。日本のメディアに応えることができて嬉しいよ。去年の12月に日本でショウをした時も、本当にクレイジーでさ。みんなも一緒にジャンプしてくれて、盛り上がりっぷりもぶっ飛んでたし、俺が今までやってきたライヴの中でもベストといえるショウだったと思う。それに、国を超えても同じヴァイブスがあるってことを学んだよ。それはスティーヴ・アオキも言ってたな。そうだ、俺、日本でもタトゥーを入れたんだ。
ー来日に合わせて、PHIRE WIREともコラボ・アイテムを作っていましたよね。
D: アメイジングでドープだったよ!俺はニューヨーク出身だし、二つの国のカルチャーの橋渡し役になれたのは、とても意味があると思ってる。
ー「Panda」でデビューし、カニエ・ウエストに見出され、すぐにメジャー契約と、シーンに出て来てからの2年間はとてもめまぐるしかったのではと思います。振り返ってみてどうですか?
D: エキサイティングだし、とにかく成長したといえると思う。なんといっても超ドープだし、すごく価値のある経験を積んでいると思うよ。今じゃ自分で生活費も払えているしね。あと、何よりも我慢することも覚えたし、そのおかげでビジネス感覚も養えた。今の俺は、ラッパーでありつつもビジネスマンなんだ。
ーカニエ・ウエストのレーベル、G.O.O.D. Musicの一員としてラッパーのキャリアを積むということは、非常にラッキーなのではと思います。
D: G.O.O.Dは最高だよ!もう神様のおかげって感じ。カニエもプシャ・Tもハードワーカーだし、テヤナ・テイラーもいい感じ。トラヴィス・スコットも常に音楽を制作してる。(プロデューサーの)マイク・ディーンも欠かせないしね。重要人物ばかりに囲まれているし、最高のファミリーと仕事をする環境にいるよ。
ーデザイナーといえば、ムラマサやスティーヴ・アオキ、BTSまで多彩なコラボでも知られると思いますが、こうしたチャンスはどのように捉えていますか?
D: どのコラボも、アメイジングな経験だよ。EDMのシーンからK-POPまで、俺が必要とされているってことは最高だよね。それに、コラボするたびに全く新しい世界に足を踏み入れて、これまでと全然違うエネルギーをもらう感じなんだ。ムラマサはヨーロッパ、BTSは韓国のバック・グラウンドがあって、それぞれ異なるエネルギーを感じた。あとは、自分もいろんなスタイルの楽曲を作れるんだということが分かったし。こうったコラボはもっとやっていきたい。俺はいつでも準備できてるぜ。
ー今も、ご自身が生まれ育ったニューヨークに住んでるんですよね?
D: そう、今もニューヨークにいる。もちろん、小さい頃から通ってきた学校なんかもある街だけど、ここにいるとハンブル(謙虚)な気持ちになれるんだ。
ーカーディ・Bやテカシ・69など、新たなタイプのニューヨーク・ラッパーたちがどんどんデビューしていますが、現在のニューヨークのシーンをどのように見ていますか?
D: 来てみれば分かると思うけど、みんなそれぞれが個性的なエネルギーでもってラップしているから、すごくいいヴァイブスに包まれてると思う。例えば、2008年くらいのニューヨークはもっとギャングスタなヴァイブスがあったけど、2013年くらいからそれも変わってきたと思う。俺もみんなも成長してるし、もっといいものを制作していくには、もっとみんなで協力していくべきとは思うけどね。
ーニューヨーク出身のホットなMCがいたら教えてください。
D: 俺の地元の仲間、J・クリッチ!!俺とJはいい関係を構築しながら、一緒に音楽を作ってるんだ。彼も、すごい勢いで成功してるから、ぜひチェックしてほしい。
ー変化が著しいラップ・シーンの中で、モチベーションを絶やさないコツがあれば教えてください。
D: 何事も広い視点で見てみること。そうすれば、自分に足りないものがわかるから、もっと頑張らなきゃという気持ちになる。
ー今回りリースされたEP『L.O.D.』のコンセプトは?
D: タイトルの『L.O.D』は<Life Of Desiigner>の頭文字なんだけど、デザイナーも次のステップに進んだ、ということを表したかった。今、俺が立ってるステージにいるのは、前と比べて成長し、変化したデザイナーなんだ。ちょっと時間が掛かったけど、周りの環境が俺を変えてくれたと思うし、やっぱりカニエ・ウエストの影響はとても大きいと思う。自分自身のスペースをどう構築していくかとか、人との関係をどう築いていくかとかね。
ーマイク・ディーンといったヴェテランから若手まで、色んなプロデューサーが参加していますが、普段どうやってビートを見つけているんですか?
D: 地元のヤツらにいいビートを教えてもある時もあるし、もちろん自分で探すこともある。 EPに入っている「LA to NY」はキッド・ケヴァ(kidkeva)ってビートメイカーのトラックなんだけど、Youtubeで<テイ・Kっぽいビート(Tay-K Type of Beat)>って検索して見つけたんだよね。シャウト・アウト・トゥ・キッドケヴァ!
ー今回のEPは、ゲスト・ラッパーは不在なんですよね?少し意外でした。
D: 今回は、<デザイナーは俺自身だ>という気持ちで挑んだEPだから、他のラッパーは呼ばなかったんだ。成長した自分が、どれだけの作品を作れるのか試してみたかったし。俺がデビューしたての頃、みんなが見てたイメージとは違う作品になっていると思う。
ーEPがリリースされた、ということは、次はアルバムの発売が控えているということ?すでに制作中ですか?
D: そう、今はアルバムを制作中だよ。よりいい作品になると思う。このEPでもトライしたんだけど、もっと自分の内面をオープンにするような曲を作ってるんだ。生きていると本当に新しい経験をすることばかりだし、そういったことを音楽にも反映させたいと思ってる。とにかく、アルバムはもっとクレイジーで、あと、ストーリーに沿ったような内容になると思う。もっと新しい作品をドロップしていくから、今は『L.O.D』を聴いてくれ!Rrrrrrr!
終始、ご機嫌なテンションで取材に応じてくれたデザイナー。初盤、こちらから日本のメディアだと伝えると、一気にどれだけ東京での経験が素晴らしかったか話してくれた様子が印象的だった。彼が説明する通り、『L.O.D』は自身の成長がよく表された内容に。同時に、ますますアルバムの完成が待ち遠しくなる出来でもある。今後も、デザイナーの最新情報はHIPHOP DNAでも追っていきたい。