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グラミー賞が発表した9つのルール変更。アーバンという表現や「新人」の基準など

 

 

先日、Republic Recordsが「Urban(アーバン)」というカテゴライズが差別的であるとして、名称の使用をやめるという発表を紹介した。この発表に引き続き、グラミー賞を主催しているレコーディング・アカデミーが、「アーバン」というカテゴライズの廃止を含む、9つのルール変更を発表している。アカデミーのCEOであるHarvey Mason, Jr.は、新たなルールについてBillboardにて語っている。

 

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・「新人アーティスト」の基準
元々「ベスト・ニュー・アーティスト」という新人賞カテゴリには、「今までリリースした楽曲が30曲を超えない」という基準があった。しかしこの度、「新人」の基準はケースバイケースで考えるべきという判断となったようだ。特にヒップホップのアーティストは、他のジャンルのアーティスト以上に楽曲を素早くリリースする傾向があるようで、「30曲を超えない」という基準がアンフェアであると判断したようだ。

 

・「最優秀アーバン・コンテンポラリー・アルバム賞」を「最優秀プログレッシブR&B・アルバム賞」に変更
差別的なカテゴライズであるとして、長年批判されてきた「アーバン」というカテゴリー。今後は、「プログレッシブR&B」という名称に変更すると発表した。こちらの「プログレッシブR&B」の定義としては、「R&Bのプログレッシブな要素が強く、ヒップホップ、ダンス、エレクトロなどのサンプルや要素を持ったアルバム」としている。

 

・「最優秀ラップ・サング・パフォーマンス賞」を廃止し、「最優秀メロディック・ラップ賞」に変更
こちらの賞は2001年に「最優秀ラップ・サング・コラボレーション賞」という名称から、コラボレーションに限らずソロ作品でも該当するように「最優秀ラップ・サング・パフォーマンス賞」という名称に変更された過去があった。しかしこの度、「最優秀メロディック・ラップ賞」に再度変更された。定義としてはラップのカデンスの上に、明確なメロディがあるものとしている。R&Bやロックなど、ラップ以外のジャンルの要素も含まれているものも、このカテゴリーに入るようだ。ジャンルのミックスへの扉を開くようにこちらに設定されたと発表している。

 

・「ラテン・ポップ・アルバム賞」から「最優秀ラテン・ポップ/アーバン・アルバム」へ変更
ラテン音楽における「アーバン」は「ロック/アーバン/オルタナティヴ」の括りから、ポップスのカテゴリに移動し、「最優秀ラテン・ポップ/アーバン・アルバム」として変更された。ラテンのコミュニティでは、アーバンという言葉に差別的な意味がないという判断に至ったと発表している。

 

・委員会での利益相反を問題視
委員会で利益相反や利害の対立が起きないようにする新ルールが適用されるようだ。元々は会員にとって利害がある作品が含まれているカテゴリでは投票できない、というルールがあったが、この度こちらのルールがさらに厳しくなり、委員会に参加できないようになった。ノミネートされている作品に携わっているか、ノミネートされているアーティストと金銭的な繋がりがあるか、アーティストと家族や血縁関係にあるか、その他利益相反に値する繋がりがあるか、ということを確認するプロセスが敷かれるようだ。

 

・委員会メンバーの任期を短縮
元々のルールは「5年務めた場合、1年間休む必要がある」というものであったが、新たなルールは3年間の任期となっている。さらに、会長に関しては「5年務めた後、2年の期間を空ける」というものであったが、こちらも3年の任期となった。

 

・透明性を保つため、公式ルールブックを公開
こちらのルールブックはGrammy.comから読むことができる。

 

・最優秀劇場ミュージカル・アルバムを受賞できる「主要歌手」を4人までに変更
今までは数に制限がなかったため、ミュージカル「ハミルトン」では10人、「ディア・エヴァン・ハンセン」では8人のソロイストが受賞していた。昨年は「大きく貢献したボーカリストのみ受賞できる」というルールに変更されていたが、この度4人という明確な数字を設定したようだ。アンサンブルが重要な作品に関しては、音源に参加しているボーカリスト全員の受賞が認められるとの発表があった。

 

・ルールは業界や時代の変動に合わせフレキシブルに対応する
適切ではないルールに関しては、次の年に「失敗」とならないように、フレキシブルに対応することも発表されている。

 

このように複数のルールが変更され、新たなルールと共に開催されるグラミー賞であるが、「アーバン」というカテゴライズについては、グラミー受賞者であるTyler, The Creator(タイラー・ザ・クリエイター)も意見していた。彼は初のグラミー賞を受賞した際に、「投票プロセス」について以下のように話している。

 

タイラー:(嬉しいと悔しいの)半々かな。俺が作ったものが、このように世界に認められたということを、とても嬉しく思う。同時に、アーティストがジャンルを超えた作品を作ると、とりあえず「ラップ」とか「アーバン」とかいうカテゴリに入れられるんだ。悔しいよ。俺はアーバンって言葉が嫌いだ。Nワードをただポリティカル・コレクトに表現してるだけだ。なんで俺たちはポップスのカテゴリに入れてもらえないんだ?このラップのノミネーションは、一見、褒めているようで、侮辱されているようにも感じる。「この子も皆がやってるゲームを一緒にやりたいみたいだから、接続されてないコントローラーを渡してあげましょう。そしたら満足して黙るでしょう」みたいな感覚だ。ただ、もう一方では、俺が作ったものがここまでのレベルで認めてもらえるということについて本当に嬉しく思ってるよ。

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