text: Sho Okuda
故2Pac(2パック)がオマー・エップスと共にダブル主演を務めた映画『ジュース』(原題:Juice、1992年)は、ヒップホップ・ファンにとっては必見ともいえる、ニューヨークはハーレムを舞台とした青春バイオレンス・ムービーだ。タイトルの”juice”はストリートでの権力や名声・リスペクトを表すスラングで、故Juice WRLD(ジュース・ワールド)も自らのステージ・ネームに取り入れるなど、近年も多くのラッパーに使われている単語である。
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スラング解説:Juice(ジュース)
この”juice”という単語には上述した以外の意味もあり、また使われ方にもバリエーションがある。さらに、ここ数年では”juice”と並んで”sauce”という単語も似た意味で使われるようになった。今回はこの2語を特集したい。
Eric B. & Rakim – Juice (Know The Ledge)
まず、”juice”は上述した以外に「性的魅力」を意味することもある。一説によれば、同単語は1600年代から「愛液」を表すスラングとして用いられていたそうであり、その意味が転じたものと考えられる。Lizzo(リゾ)が言うところの「Juice」はこの意味であろう。
Lizzo – Juice
It ain’t my fault that I’m out here gettin’ loose
Gotta blame it on the Goose
Gotta blame it on my juice, baby
私がここで乱れてるのは 私のせいじゃない
グレイグースのせいよ
私のジュースのせい ベイビー
名詞”juice”を形容詞にすると…そう、”juicy”である。故The Notorious B.I.G.(ザ・ノトーリアス・B.I.G.)の「Juicy」においても、Doja Cat(ドージャ・キャット)の「Juicy」においても、いかに”juice”を有しているかが曲のテーマとなっている。それぞれの言う”juice”がどちらの意味に該当するか、考えてみるのも面白いかもしれない。
The Notorious B.I.G. – Juicy
Doja Cat, Tyga – Juicy
スラング解説:Sauce(ソース)
この”juice”と似たような意味で用いられるのが”sauce”だが、その用例として最も有名なものの一つが以下の曲であろう。ポスト・マローン(Post Malone)本人は”sauce”の意味を「ソースとはスワッグ、個性なんだ」と説明している。ここでは同単語が”I’m saucin’ on you”と動詞として使われているが、これはすなわち「これが俺だ(というのを見せつけている)」くらいの意味なのだとか。
Post Malone – White Iverson
では、”juice”と”sauce”の違いは? 一つには、後者は「服」「時計」「アクセサリー」など物質的なものを指すのにも使われることが挙げられる。ソースが食べ物にかけて味を足すものであることを踏まえれば、このことは自然に理解できるかもしれない。
DJ ESCO – Too Much Sauce ft. Future, Lil Uzi Vert
Patek Philippe, the plain one, that’s too much sauce
Hermes in the A, that’s too much sauce
カスタムしてないパテック フィリップ ソースがたくさん
アトランタのエルメス ソースが多すぎる
また、以下のような用例も確認される。
Young M.A – OOOUUU
They say I got the juice, I got the sauce
みんな私にはジュースがあるって言うけどソースだよ
はっきり言って、ここまでくると意味が分からない。「ジュースよりも濃いのがソース」くらいに捉えればよいのかもしれない。
【スラング解説】獰猛なまでにイケてる?「Savage(サヴィッジ)」というスラングを解説
参考
– Genius | Song Lyrics & Knowledge
– Urban Dictionary: Juice
– juice | Dictionary.com
– too much sauce | Dictionary.com