今、全米で一番売れているラッパーとグループがタッグを組んだオーブリー&ザ・スリー・ミーゴス・ツアー。8月にスタートして全米各都市のアリーナを回ってきたが、今夜は4夜連続で行なわれる17000人収容のザ・フォーラム公演の初日だ。ドレイクとミーゴスはこの4公演を完売にした上に、ここから車で30分程度の距離にあるステープルズ・センターで、すでに3公演を終えている(ドレイクの新曲「シッコ・モード」で共演したトラヴィス・スコットを始め、タイガ、クリス・ブラウンがサプライズ出演。トラヴィスは2日目のフォーラム公演にも飛び入りした)。ロサンゼルスの計7公演だけで、集客数は驚異の10万人越えだ。
フロアの中央に巨大な長方形のステージがあり、中心にDJブースが設置されている。そしてステージ真上の天井から、東西南北の全方向に大画面スクリーンが吊り下げられていた。8時半すぎ、花道を通ってミーゴスの3人が登場。場内に大歓声が響き渡り「ハナ・モンタナ」で、ショウがスタートした。派手なライティングと映像にマッチするカラフルな衣装の3人は、ステージ上を動き回りながらそれぞれにオーディエンスを煽る。「ハンサム&ウェルシー」に続けて「パイプ・イット・アップ」に雪崩れ込み、彼らは場内のテンションをガンガン上げて行く。
ミーゴスの3人は、往年のギャングスター・ラッパー達と同じく、底辺から頂点へとのし上がった。最新作『カルチャーⅡ』は前作『カルチャー』に続き全米アルバム・チャート1位を記録する大ヒット作となり、最高のサクセスストーリーを生きている彼らは、頂点に立つ者の貫禄と余裕を見せつけてくれた。富、女、車、銃、ドラッグ、それら全てを手にするためのハッスル。大半の曲がこれで成立しているミーゴスだが、クエイヴォは3拍子に乗る独自のフロウで、次々に鋭いライムを叩きつける。そこにオフセットのカウンター・パンチのようなライムとかけ声が切り込み、要所要所でテイクオフが、けだるい感じで動きながらディープなラップを入れて絶妙にバランスを取る。三位一体とは正にこのこと。ハイライトは「Tシャツ」で、会場全体が一体となってサビを大合唱。ラスト曲の「モータースポット」では花火が大噴出し、耳をつんざくような大歓声が巻き起こる中、3人は颯爽と花道の下へ潜って行った。
DJタイムを挟み、ミーゴスに圧倒された余韻が残る中で始まったドレイクのステージは、文字通り前代未聞だった。まず頭上のスクリーンの下から透けた布の垂れ幕が降りて来て、ステージ四方が完全に布で覆われる寸前に、花道の下からドレイクが姿を現し、ステージの中央まで躍り出た。スクリーンに「サイドA(A面)」という文字が大写しになると同時に、映像が映し出される布の向こうで人影となったドレイクは四方八方に飛び回りながら、新作『スコーピオン』の「8・アウト・オブ・10」のライムを繰り出す。一瞬で場内が巨大なクラブのように盛り上がった。
数曲後に布が上に上がると、黒TシャツにOVOのベストを着たドレイクが立っているステージが、巨大なLEDスクリーンであることに気づいた。炎が流れるような映像からプールで泳ぐ女性達まで、曲毎に様々な映像が流される。さらに次の曲「エレヴェイト」では花道の穴から、1機、2機とドローンが登場。計40機ほどのドローンがライトの色を変えつつ飛び交う中で、ドレイクがライムする。そしてリル・ベイビーとのコラボ曲「イエス・インディード」では、黄色いランボルギーニがフロア席の入り口から横になって姿を見せ、徐々に宙吊りになってステージ近くまで飛んで行った。
しかし何よりも凄いのは、これらの近未来的で豪華なセットよりもはるかに輝いている、ドレイクの圧倒的なスター・オーラ。彼はスタイリッシュなトラックに乗せて鮮やかにライムを繰り出し、時にメロディを歌いながら360°のステージを軽やかに歩き回って全方向の観客を煽り、何度もマイクを客席に向けてオーディエンスに一緒に歌わせた。「人生は素晴らしい旅路だ。俺はザ・フォーラムで17000人の観客と一緒にいる、LA、これが10年も続いたなんて信じられるか? だから今日は特別なことをやることにした」というMCの後、「フリー・スモーク」、「ポップ・スタイル」、「ヘッドラインズ」等の初期の曲のメドレーで場内は最高潮に盛り上がった。
それからドレイクをフィーチャーしたミーゴスの「ウォーク・イット・トーク・イット」(『カルチャーⅡ』収録)で、ミーゴスが再登場。ドレイクは続けて彼らと「ヴェルサーチ」をパフォーマンスしてから一旦姿を消し、その後ミーゴスが新作から「スティアー・フライ」を含む数曲を披露した。
スクリーンに「Bサイド」の文字が大写しになり、「ザッツ・ハウ・ユー・フィール」で始まった第2部は、女性ファンの心を鷲掴みにするR&Bタイム。白Tシャツに着替えたドレイクは、マイケル・ジャクソンの「ロック・ウィズ・ユー」のカヴァーやリアーナとのデュエット曲「ワーク」等を織り込みながら、ニュー・アルバムで全米1位を達成した「ナイス・フォー・ホワット」と「イン・マイ・フィーリングズ」を鮮やかに歌ってオーディエンスを大合唱させ、踊らせた。ヒット曲ばかりで約40曲、あまりにも濃厚でエキサイティングな90分だった。このツアーは今後、歴史上重要なツアーとして語り継がれて行くだろう。
Text: Miho Suzuki