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2Pacが語ったアメリカにおけるラップとプロテスト:「今までと同じように頼み続けても変わらない」

 

現在、アメリカではGeorge Floyd氏が警察によって不当に殺害されたことが引き金となり、人種差別的なシステムを改善する抗議デモに、多くの人が参加している。デモ参加者が暴徒化しているとマスコミでは報道されているが、現地のデモ参加者の映像を調べると、実際には平和的なデモ参加者を警察から攻撃しているパターンも非常に多く見られる。このようなプロテストは今に始まったものではなく、長年訴え続けたことであり、その経緯を知ることは重要であろう。後世のラッパーの多くを影響した西海岸をレジェンドとして知られる2Pacが、1994年のインタビューで語った言葉が彼らの想いを表している。

 

 





 

 

2Pacは1994年に行われたMTVのインタビューで、以下のような質問を受けた。(00:50あたり)

 

 

「ヒップホップは最初、Grandmaster Flash & The Furious Fiveの楽曲『The Message』に代表されるような、社会における問題を示すような曲が多かった。しかし、問題は今もあるにも関わらず、ヒップホップ音楽の内容は過激になってきている。希望もなく、何が起ころうと知らない、というような態度の曲が多いように思える。なぜヒップホップはGrandmaster Flashから、今のような内容に変化したと思いますか?」

 

 

こちらの質問を受け、2Pacは以下のように答えた。

 

 

「論理的じゃないといけない。もし俺が、あるホテルの部屋で、毎日豪華な食事が振る舞われていることを知ったとしよう。食べ物を分けてもらおうと、毎日ドアを叩きに行く。部屋の人たちは、ドアを開けるから、サラミが大量にあるパーティーの様子が見えるが、毎回『食べ物はここにはない』、と言われる。

 

 

そうすると、俺は部屋に入れてもらうために、外から歌って中に入れてもらおうとする。『(優しく歌う)お腹が空いているから、入れてくれ』ってね。

 

 

それでも入れてもらえない場合は、一週間後には『頼む、腹が減っている、食べ物が必要なんだ…!』って歌に変わるだろう。それでも無視されたら、2〜3週間後には空腹により、『食い物を渡さないとドアを突き破るぞ!』になるだろうし、数年後には『入れてくれないなら、俺は鍵をこじ開けて突入してぶっ放す!』という歌詞になるだろう。餓死しそうで、我慢が出来なくなるんだ。

 

 

俺らは10年前から頼んでいる。それより前は、ブラックパンサー党や公民権運動という形で頼んでいた。でもそうやって頼んだ人たちは、殺害されたか牢屋に入れられてしまった。この状況で、俺らはどうすると思う?今までと同じように頼み続けるか?

 

 

俺たちは怒るべきなんだ。俺は、自分のコミュニティーに向けてラップするときは、怒りに満ち溢れているべきだと思う。俺たちが長年受けてきた酷い仕打ちについて語るべきなんだ。なぜならメディアはこれを報道しない。だから俺らがラップの中で、現状について必ず語らなきゃいけないんだ。他の人がこれについて話していないから、俺らが異質に思われるってだけなんだ。」

 

 

2Pacがここで言ったことは、ラップの内容の変化だけでなく、時代の変化も表しており、人々がどのような想いでプロテストをしているかにも繋がってくる。アフリカ系アメリカ人は、奴隷制が禁止された後も、差別的な社会の「システム」のなかで生きている。いくら頼んでもシステムが変わらなかった場合、人々の行動のベクトルが変わっていくのは当たり前であろう。2Pacの親は革命による黒人解放を提唱していたBlack Panther Party(黒豹党)のメンバーでもあったことから、この闘争を目の前で見てきたのである。彼がここで語った「歌詞の中で日々の苦しみを語ることの重要性」は、多くのラッパーに引き継がれている。ヒップホップに込められた想いだけではなく、その背景からも想像力を働かすことは非常に重要である。

 

 

こちらで紹介した、米国の人種差別、法と政治、大量投獄の歴史に踏み込んだドキュメンタリー『13th』と、ジェーン・エリオット博士が行った実験は必見であろう。

 

 

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