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MF DOOMが数十年間に渡って経験したアメリカ移民制度における困難。移民局の未公開資料によって明かされる。

 

 

2020年の10月31日に亡くなったアンダーグラウンドのレジェンド、MF DOOM(エム・エフ・ドゥーム)。彼が亡くなったと公表されたのはその年の大晦日で、ヒップホップの悪役キャラとして知られるMF DOOMの訃報に多くのアーティストたちが追悼のメッセージをSNSなどで公開していた。MF DOOMが作り上げた世界観アーティストとしての功績はHIP HOP DNAでも以前紹介したが、今回はPitchforkの記事を参考に、彼が経験したビザ関連の困難を紹介したい。

 

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MF DOOM=本名Daniel Dumile(ダニエル・ドゥーミレイ)は1971年にロンドンで生まれ、幼少期にニューヨークのロングアイランドに移住した。ある時、2010年に世界ツアーを終えた彼はアメリカに入国しようとした際に、入国拒否をされている。Pitchforkが情報公開法で入手した米国市民権・移民局(USCIS)の未公開資料によって、MF DOOMが法的地位を獲得するための数十年間に渡る試みと、彼が経験してきた困難が明らかになった。

 

ロンドン西部のハウンズローで生まれたMF DOOMは、トリニダードとジンバブエからの移民である母親と父親と共にアメリカに移り、ニューヨークのロングビーチなどで暮らすようになった。MF DOOMの母親は彼が3歳の時に、彼の永住権を獲得するため、親族による請願書を提出したようだ。こちらは米国市民や永住権保持者が肉親を移民させたい場合に最初のステップとして行う手続きである。そして5ヵ月後に、この請願書は承認された。

 

次のステップとしては永住権の申請が行われるが、そのような申請は行われなかったようだ。そのため、同年に連邦政府はMF DOOMを外国人として登録し、国外追放されることになる。
2004年にMadvillain名義でMadlib(マッドリブ)とのコラボアルバム「Madvillainy」をリリースしたばかりのMF DOOMは、トロントからアメリカに入国する際に入国審査を受けている。彼は自身が米国民だと思っていたため、この時に初めて自分に法的地位がなかったことを知ったようだ。

 





そして2010年にツアーでアメリカに入国しようとしたMF DOOMは、その際にビザ免除制度によって「誤って入国を許可されていた」と国土安全保障省によって記録されている。その後、同年にまたアメリカに入国を試みたMF DOOMはCBPから質問を受けている。

 

記録によるとMF DOOMはCBP職員に対し「アメリカに無期限に滞在するつもりではない」と話しており、2019年の1月19日に予約されたイギリスへの航空券を見せたという。しかしCBPはそれにも関わらず、移民法に基づく3つの異なる理由で彼を入国不許可とした。1つ目の理由は、彼が移民ビザを持たない移民であること。2つ目の理由は、彼が「不道徳行為を伴う犯罪」で有罪判決を受けた過去がある、ということである。これについては、記録によるとMF DOOMが1995年に保護観察処分を受けた軽犯罪の第3級暴行事件という大まかな記述となっている。CBP職員が挙げた3つ目の理由は、MF DOOMがアメリカで「1年以上の不法滞在をしていた」ということだった。

 

移民問題専門の弁護士であるKim Xavier氏は不法滞在について説明をしており、正規に登録されていない滞在者は18歳になってからは不法滞在という扱いになるようで、不法滞在が1年以上発生し続けた状態でアメリカを出国した成人は免除を申請できるが、その後10年間再入国を禁止される。その後、非正規の方法で再入国を試みた場合は「永久的」に入国禁止措置が取られ、少なくとも10年間はアメリカに移住するための再申請ができなくなる。Kim Xavier氏は、このことについて以下のように語っている。

 

「アメリカの移民法は、弁護士にとっても迷宮のようなもので、常に変化し続けています。DREAM法が2001年に初めて提案されたときに成立していたら、MF DOOMはもしかしたらその恩恵を受けていたかもしれない。しかし、現実は違ったのです。」

 

このように世界的に活躍するアーティストでもビザの獲得、あるいは移住が難しく、MF DOOMは生涯に渡り困難を経験してきたのである。しかし、MF DOOMは2012年のThe Guardianのインタビューにて以下のように語っている。

 

「誰もが、人生の中で様々なことを経験する。俺はこのような考え方を広めようとしているんだ。物事を嬉しいとか悲しいとかで考えるのではなく、出来事や経験として捉える。一歩下がって、ニュートラルである必要があるんだ。」

 

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