2015年にリリースされたケンドリック・ラマーの名作『To Pimp a Butterfly』。第58回グラミー賞にてアルバム・オブ・ザ・イヤーを含めた11部門にノミネートされ、最優秀ラップ・アルバムなどを受賞したこちらのアルバムは、そのコンセプチュアルな内容とケンドリック個人の成長ストーリーが絶賛された。2017年からアルバムをリリースしていないケンドリック・ラマーであるが、Rolling Loudのヘッドライナーが決まったり、多くのアーティストが彼のアルバムの存在を明かしていたり、今年こそ新アルバムがリリースされるという噂が広まっている。そんなケンドリック・ラマーの『TPAB』で、非常に強いインパクト残した楽曲「u」についてのインタビューをおさらいしたい。
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メンタルヘルス的な観点や、鬱症状について、自分の経験を語るアーティストは多い。ケンドリック・ラマーもその一人で、彼が2015年にリリースしたアルバム「To Pimp A Butterfly」は、自分自身と社会と向き合った作品であった。特に楽曲「u」は、リアルな鬱症状や自己嫌悪がテーマになっており、ケンドリック本人も「今まで一番書くのが難しい曲だった」と語っていた。そんな楽曲について、リリース当時のMTVのインタビューを紹介したい。
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ケンドリックは「u」についてこのように語っている。
あの曲は過去の経験だけではなくて、俺の人生そのものが元になっていると思う。『good kid, m.A.A.d. city』にて語った状況も含まれているし、人生の全てがこの曲の元になっている。この曲以上に自分の弱さや、ネガティヴな面を見せた楽曲はないよ。コンプトン出身という経験も元になっている。
ケンドリックは、人生そのものが「u」にて語られていると説明した。「u」は、自己愛や、自分の様々な面を擁する内容の「i」とは裏腹に、自己嫌悪や、周りの環境に対しての罪悪感を語っている。自分が世界で活躍する間に、自身の妹が10代で妊娠したことや、友人の多くが残酷な環境によって殺害されたことについて「10万人に自分のメッセージを説いているのに、彼女には届かなかった/お前はリーダーなんかじゃない/お前は友達なんかじゃない、友達は利益のためにコンプトンを離れたりしない、親友を置いていったりしない」という旨のラップをしており、自分自身を非難している。
ケンドリックは続けて、ツアー中に感じたことについても語っている。
地元や家族が抱えている問題に対して、自分は何もできることがなかった。何もコントロールできない状態で、神の手に委ねるしかない。それを受け入れることができなかった。それが続くと、自分が正気でいられるかどうか、わからなくなってくる。アーティストはこのようにダメになってしまう。そういうことが起こっていて…、俺のセラピーと治療は、音楽を作って表現することだった。それでこの曲が生まれた。このアルバムには、「u」のような曲が絶対に必要だった。
正気でいられるかどうかの境目で、セラピーとして音楽で自分の感情を表現する。そのようにして、今まで人にさらけ出せなかった自分自身の吐き出した「u」が生まれたと語った。しかし最終的には、それを表現をした上で、自分を擁し、自己愛が重要になるとケンドリックは話している。
アルバムの全体的なテーマはリーダーシップなんだ。良くも悪くも、どうやったらこの影響力を使うことが出来るのか?金と知名度をどのように使うことが出来るのか?ネガティブに表現するのか、ポジティブに表現できるのか?俺にとってのポジティブは、「u」を示した上で、「i」に戻ってきて、「それでも自分を愛している」と伝えることだった。
このようにケンドリックは、メンタルヘルス的な観点でも、多くのファンと共鳴し、救ってきた存在なのであろう。またインタビュアーのRob Markmanが「u」の内容に驚いたと語ったように、そのような側面を見せていない人でも、本人がどのような問題を抱えているかは、本人にしかわからない。他人が抱えるものを一方的に判断するべきではなく、そのような話題をセラピーとして話すことができる、コミュニケーションを取りやすい環境や空気を作ることが重要なのだろう。
いのちの相談窓口のリンクなどが地域ごとにまとめられたウェブサイトはこちらからチェックすることができる。