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UKヒップホップシーンを代表するベテラン・ラッパーGiggs(ギグス)インタビュー。自身のスタイルや新プロジェクトについて語る。

 

Text: Kaz Skellington

 

UKヒップホップシーンのベテランGiggs(ギグス)。1983年に南ロンドン・ペッカムで生まれ、10代の頃にはストリート・ライフを生き、服役後にラッパーとして本格的に活動をするようになる。2008年にスタジオ・デビューアルバム「A Walk In Da Park」をリリースし、BETアワードのベスト・UK・ラップ部門を受賞したこともあり、UKヒップホップを代表する存在になる。ドレイクの「More Life」に2曲参加するだけではなく、JadakissやSwizz Beatzなどとコラボをし、米国のアーティストからも非常にリスペクトされている彼に、ショートインタビューをすることができた。

 

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➖Giggsがどのような環境で育ったのかを教えてください。

 

Giggs:米国風に言うと、街というよりもっと「コミュニティ」って感じのところなんだ。団地のようで、多くの人が一つの区画に住んでいるコミュニティだった。ラフな環境だったけど、他の街と変わらない感じだ。

 

 

 

➖小さい頃の経験や音楽にどのようにしてハマったのかを教えてください

 

Giggs:昔から音楽に執着していた。昔はラガや、レゲェのDJをやっていたんだ。母親がいつも大量のレコードを買ってくることが自分の原点だったかな。ターンテーブルとか、スピーカーとか、音楽に関すること全てを愛していた。母親のターンテーブルを使い倒していたよ(笑)

 

 

 

➖その後ラッパーになったきっかけはなんだったのですか?

 

Giggs:ストリートライフに足を踏み入れて、DJをしなくなっていたんだ。クレイジーなことに巻き込まれたりしていた。私の兄がUKガラージのMCをやっていて、自分もやってみようってなったけど、ヒップホップにハマっていたから自分はラッパーに転向したんだ。

そこからミックステープとかを作っていたけど、捕まって刑務所に入ってしまったんだ。出所してからは全てを音楽にかける気持ちでミックステープとかをリリースしまくった。音楽以上に重要なことはなくなって、それに全集中していたよ。

 

 

➖Giggsはラップゲームのベテランで、1stアルバムのリリースが2008年だったと思うのですが、SoundCouldとかSpotifyなどが世に出る前からラッパーとして活動してします。インディペンデント時代のミックステープがかなり売れていたという話を聞いたのですが、実際にはどうだったのでしょうか?

 

Giggs:なんか皆そう言うんだけど、実際は売れてないよ(笑)皆「彼のミックステープはめっちゃ売れた」って言うけど、正直無料で配っていただけなんだ。
私は単に音楽をやるのが好きで、誰も私のことを知らないことは知っていた。だから一回聞かせることさえできれば、皆好きになると知っていた。

 

だから本当どこでもミックステープを配ったよ。トラップにいるときも車から飛び出して、人に配ったりしていた。ドラッグディーラーとして金はすでに稼いでいたから、ミックステープで金をもらう必要はなかった。
音楽はお金のためじゃなくて、単に音楽を聞いてもらいたかったんだ。

 

今でもそうだ。私の音楽を聞いてもらい、「これは凄い」って思ってもらうことが自分にとって全てなんだ。

 

 

 

➖ Giggsは声もとてもオリジナルで、声だけじゃなくてカデンス、フロー、ライムもとても独特だと思うのですが、昔からそういう意識があったのか、徐々にそうなっていったのかを知りたいです。

 

Giggs:最初からそうだったわけではないよ。今聞いたらめっちゃ嫌いな曲とかもあるし(笑)

 

 

➖そうやって成長していくアーティストあるあるですね(笑)

 

Giggs:そうそう(笑)そうやってアーティストは、自分の過去の作品から学んでいくんだ。最初はUKガラージでラップをしていたから、もっと簡単だったんだ。大体同じテンポだし、入れれる言葉数も少ないから、勝手にフローが出来上がってくる。
でもヒップホップになると、その倍の言葉数を入れないといけないんだ。ラップをしていて、もっと言葉を入れないといけなくなると、フローに飽きる可能性がある。だから音楽と一体になれるようなフローを身につける必要があったんだ。

 

 

➖アメリカや他の国を見ても、すごく独特なフローを持っていると思うのですが、フローだけではなく、ご自身の経験から自分の周りの環境や社会的なことについてもラップをしていると思います。特に「Talk About It」という曲が好きです。

 

Giggs: おお、ありがとう!

 

 





 

 

➖それを踏まえて、2020年にリリースした最新のプロジェクト「Now Or Never」はどのようなテーマで制作されたのでしょうか?

 

Giggs:いつものように、自分の人生のバイオグラフィーだよ。そして毎日の人生におけるチャレンジって感じかな。

 

 

 

アルバム・カバー的には、Giggsは今まで世界中のアーティストとコラボをしていて、まさに「Now Or Never」という「今」世界を征服するというテーマを感じました。

 

Giggs:そうだね。まさにそういうテーマだったよ。本当はアメリカへのビザを待っていて、このプロジェクトは向こうで完成させようと思っていたんだ。そこから「今」世界に向けて攻撃を開始しようと思っていた。でもパンデミックになって、世界が止まってしまったんだ。

 

だからイギリスで完成させることにして、クラブが再オープンするのをチームで待っていたんだ。でもアルバム・カバーには「Now Or Never」って書いてあるんだ。だから「今」を体現するために「リリースしないと!」って思ったんだ。

 


➖普段どのようにして海外のアーティストとのコネクションを作っているのですか?

 

Giggs:インターネットで連絡くることもあるけど、アーティストがイギリスにきたときに紹介されることが多いよ。イギリスはある意味危ないから「こいつらは信頼できるやつらだ」って感じで、紹介される。そうやってWaka FlockaとかJadakissとかと知り合った。

 

 

 

➖あのJadakissとの楽曲「Mic Check」、めっちゃ好きです!

 

Giggs:君はハードなやつが好きなんだね!日本はとても「リアル」なヒップホップやレゲェを聞く人が多いイメージがあるし、そういうところが好きだな。

 





 

 

➖Giggsは自身をグライムのアーティストはなく、「UKヒップホップ」アーティストだと言っています。それはなぜでしょうか?

 

Giggs:グライムはずっと140bpmなんだ。暗いし、バウンシーじゃないといけない。でもヒップホップは、様々なテンポがあるし、テーマも色々ある。自分もグライムを作るし、グライムも好きだけど、自分はヒップホップアーティストだと思う。

 

 

 

➖Giggsはご自身でレーベル「SN1」をやっていますが、そのビジネスのスキルはどのようにして得たのですか?

 

Giggs:それはストリートから学んだかな。正直全てのハッスルは同じだと思うんだ。ストリートでやっていたハッスルは、失敗したら死ぬか一生刑務所だけど、このビジネスってハッスルは失敗してもまたトライできるから、失敗から学ぶことができる。失敗することは、最も有効な学びだ。

 

 

 

➖最後に、パンデミックが終わったら、まずは何をしたいですか?

 

Giggs:まずはアメリカに行って、色んなアーティストとコラボしたいって言いたいところだけど、正直ディズニー・ワールドに行きたいかな(笑)

 

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